ポッドキャスト最後の年

Daichi Sakota
blog.daichisakota.com
7 min readDec 26, 2018

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年末らしい振り返り記事をもうひとつ。

今年、ぼくと木村はるかのふたりで配信していたポッドキャスト「ひいきびいき」が最終回を迎えた。
指折り数えてみると、足かけ10年近くポッドキャストをやっていたことになる。もともと軽い気持ちで始めたこととはいえ、さすがにこのくらい長くやっていると終わることに関してすこしはセンチメンタルな気持ちになる……かと思ったんだけど、そんなことはやっぱりありませんでした。ポッドキャストという形態はあくまで数ある発信手段のうちのひとつだし、今後も発信は続けていくだろうしね。

とはいえ、さすがにポッドキャストに関してはやりきった感がある。逆にいうと「やりきったから終えることができた」ということかもしれない。「やりきった」ということは、もう今後ポッドキャストはおそらくやらないだろうということだ。なので、年が明ける前にすこし振り返っておきたい。

ゲーム脳ばと

「ゲーム脳ばと」の初回配信より前、プロトタイプを聴いているところ。アルバムアートが正式版と異なる。

初めて配信したポッドキャストは「ゲーム脳ばと」という名前で、2009年から始めた。小学校からの同級生3人で、益体もない話をだらだら流すだけの番組。でもこれが自分たちがびっくりするくらいのヒットになってしまった。アップル社が年末に選ぶ年間ベストポッドキャストに選ばれもした(2回も!)

ヒットになった要因はいくつか思いつくけれど、おそらくラジオ局がポッドキャストに本格参入して間もない時期だったために鉄板コンテンツが少なかったということと、タイトルに「ゲーム」が入っているので特定の層に見つけてもらいやすかったということが大きいと思う。部室感のある気取らない話が面白かったという理由も、ほんの少〜しはあるかもね。

一番びっくりしたのは、通勤のために乗った電車で前に立っていた人が手に持っていた iPod の画面に「ゲーム脳ばと」のアルバムアートが表示されているのがちらっと見えた時。そんなことってある?

でも、「ヒットした」ことが理由となってこのポッドキャストは終了を迎える。
もともと互いに話をすることが好きな友人同士が、その話をほかの人が聞いてもすこしは面白いんじゃないかと思って配信を始めた。最初はいつもどおり楽しく話していたんだけど、気づけば「多くの人に聞いてもらえる話を配信するために話題をひねり出さないといけない」という状態になっていて、精神的に負担があった。

もちろん3人それぞれにほかの理由もいくつかあったけれど、あとから振り返ると実はみんなこれが一番大きかったんじゃないかと思ってる。手にあまる範囲の人に届いてしまうと続けることが難しくなる、ということをぼくはこのポッドキャストを配信する中で学んだ。

「ゲーム脳ばと」は2012年に最終回を迎えた(すでにウェブサイトは公開を停止してる)。このポッドキャストを通じて、とても多くの人と出会うことができました。今でもたまに「ゲーム脳ばと聴いてました」と言ってもらえて、驚くと同時にとてもありがたい気持ちになる。

ひいきびいき

「ひいきびいき」のマスコットキャラ、のボツ案。しっぽがハートになってる。

「ゲーム脳ばと」が終わりに近づくにつれて、今度は自分が完全にコントロールできる番組を作ってみたいという気持ちが生まれてきた。

前の番組を開始した時とは逆に「配信し続けることを目的とした話題設定をすることが容易である」という設計にする。ちゃんと届ける対象のサイズ感も絞り、配信頻度も下げる。今回は続けること自体が目的なので、精神的に負担になりづらいような建て付けにするすることは大切だった。そして、こうしたコンセプトを理解してくれる新しい相棒を探す必要があった。

木村はるかはこうした発信をシリアスに捉えることができるプロフェッショナルで、なおかつ長年の友人でもあるため話もしやすい。なにより彼女の話はおもしろい! うってつけの相手だった。誘いを断られなくて本当によかった。

「ひいきびいき」と名付けられた新しいポッドキャスト番組は2012年に配信を開始し、ほぼ狙い通りのサイズ感でヒットした。配信は地味に続き、頻度は結局増えて前の番組とほぼ同じになったけど、それでも負担に感じることなく続けることができて、気がつくと配信回数は「ゲーム脳ばと」を超えていた。ちなみにレビュー等はけなされていたりしたら傷ついてしまうのであまり見ていません。エゴサーチもほとんどしてない。

「ゲーム脳ばと」でできなかった公開収録イベントも開催することができ、多くのリスナーさんと実際に顔をあわせることができた。この時点で個人的には「あちら側の壁に手をついた」という感覚があり、もしかしたらこの後番組を先へ進めることは難しくなるかもしれないな、と思ったことを覚えてる。

初期設計がわりとうまくいっていたので、ただ続けるだけならまだまだ続けられたかもしれない。でもこの設計では新しいことはもうできなさそうだった。ぼくはこれを「ひいきびいき」でやれることはやりきったということだと理解した。

その後、配信は1年ほど続き、今年の6月に「ひいきびいき」は最終回となった。終える時もきちんと事前に計画をして、きっかり6年にあたるタイミングで、エピソード数も端数が出ないように終えることができた。

次に来るもの

今はなにもしてない。じゃあ今後は?

最初に言ったとおり、おそらくポッドキャストはもうやらないと思う。ただ、しゃべるのを配信することの楽しさは消えたわけじゃないので、なにかしらの配信はやりたいなと思ってる。

「ひいきびいき」が終わった直後は、トウィッチでゲーム配信でもやるのかな……とぼんやり考えてたんだけど、最近はゲームに対する情熱も前ほどではなくなってきているので、この状態でゲーム配信を始めたらゲームをプレイすること自体が苦痛に、少なくとも義務になってしまいそうだなと思ってる。それは避けたい。

じゃあユーチューバーかというと、それもどうだろうな。動画の編集は大変だと思う(音声の編集だけでもあんなに大変だったんだから!)。ユーチューバーの皆さんは本当にすごいと思います。

やりたいことは頭の中でぼんやりと形になりはじめている。

そのアイデアを紹介しようと思ってここに書き連ねていたんだけど、やっぱり気が変わってすべて消した。こういうのを形になる前にどこかで話しちゃうのはちょっとかっこ悪いかなという気がしたので。

ひとつ言えるのは、ぼくはもともと話の中心になるのが好きなわけではなくて、番組や配信の枠組みをデザインするのが好きだっていうこと。
パーソナリティとしてしゃべるのも好きだけど、これもどちらかというと自分以外の人がしゃべっているのを、聴いている人にとってわかりやすいかたちに誘導してあげる、場を回してあげる司会っぽい動きのほうが好きだ。場が回せるなら自分はしゃべらなくたって構わない。
このあたりは次になにをやろうか考える際のヒントにもなっている。

というわけで、またなにかやりはじめたらツイッターなどでお知らせするので、ちょっと覗きに来てもらえるととても嬉しいです。

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